※本ブログは2018年6月3日にはてなブログに投稿されたものです
こんにちは。Mr.3バックこと私です。嘘です。
今回は日本代表に関して。一応最初に言っておく。日本サッカー(協会)への不満はタラタラである
わけだけど本日は少し真面目に語ろうと。
とはいえ戦術マニアでもないしチェルシーの試合くらいしかしっかり見ていない。ところがついこの間の試合で3バックを日本が試したと聞いた。そこで思った。
これは語ろう、と。
一言言いたい3バック
5月30日のガーナ戦で日本は3バックを導入。3-4-2-1で迎え撃つも結果は0-2の敗戦。

スタメンはこちら。本田、宇佐美のシャドー。
「内容は良かった!」とか「シュートは打ててた!」という好意的な意見も見受けられたところではあるが中核の抜けているガーナ相手に完敗は笑えない。
日本のクラブでは浦和レッズ、サンフレッチェ広島、コンサドーレ札幌で指揮を執った(ている)ペトロビッチ監督や元広島で現U世代代表の森保一監督が採用している以外3バックのチームはほとんど見受けられない。(もっともこれはJ1の話でありJ2ではほとんどのチームが3バックを採用している)

(浦和公式より)ペトロビッチ監督。広島、浦和、札幌(現)で3バックを採用。
何が言いたいかというと要するにみんなあまり3バックを見慣れてないのである。特に代表ではザッケローニ監督が3-4-3を諦めたあたりで日本代表3バックの系譜は断絶されている。高いレベルでの3バックを知らない者は多い。

(サッカーキングより)ザッケローニ元日本代表監督。3-4-3導入を図るも断念
欧州でも(一時期プレミアで旋風が吹き荒れたとはいえ)現状3バックを採用するトップクラブは少ない。セリエAのユベントスはいわゆるBBCを並べた3バックを得意としていたが、今では4バックも多い。奇策として「用意」するチームはあれどスタンダードにしているチームは少ない。
ちょっと待て。
3バックなら一言言いたい。なぜなら我々はチェルサポだからだ。
世界の潮流に抗うが如くチェルシーは毎試合のように3バックで戦う稀有なチームである。今季はあまり振るわなかったが結果はそれなりに残している。
そこで今回は3-4-2-1を何十試合と見て来たチェルシーサポーターの観点から日本代表の新布陣を考察する
席巻
欧州強豪の中で近年(というかここ2年)3バック採用率が高いチームがチェルシーである。当然チェルシーサポーターは見慣れている。昨季マンチェスターシティが圧倒的な強さと連勝記録を打ち立てたが一昨季の3バックを採用したチェルシーの強さも忘れてはならない。

(チェルシー公式より)3バックを採用するアントニオ・コンテ現監督
「チェルシー」ではなくこの「システム」に注目が集まった理由は
- 3バックのプレミアでの成功実績が少ない
- 連敗してからの採用→連勝
- コンテ監督の十八番
だったからだろう。繰り返すが3バック採用後は圧倒的な強さでリーグを制する。
興味深いのは今まで3バックに見向きもしなかったプレミアの各チームがこぞって導入し始めたことだ。
昨季そのチェルシーを超える勝点で優勝したマンチェスターシティの戦術を真似するチームが皆無なのとは対照的である。布陣的にはシティの4-3-3の方が選手も慣れ親しんでいるはずではあるのだが。
強き「弱者の戦術」
シティは大金を払い能力の高い選手を多く獲得し今のポゼッション主体の戦術を実現させた。すなわち強き強者のサッカーである。残念ながら一昨季は戦術と選手の質が噛み合わず無冠に終わった。
シティの戦術は土台がかなり高い次元でなければならない。ところが当時のチェルシーは直前でリバプール(1-2)、アーセナル(0-3)と連敗したことから分かるように決して選手の質で圧倒的優位性はなく、むしろ劣っているという見方もできた。
この事実は中堅、下位チームを率いる監督にとっては朗報だっただろう。どうして上位チームと異なり選手の質で劣ってしまうからだ。もっとも監督自体にも指導経験が乏しくあまりに付け焼き刃すぎて粉砕されたケースもあるのだが(エヴァートンはチェルシーにミラーゲームを挑み5-0と惨敗した)。
となると気になるのが何が3-4-2-1の強みであり弱みなのかという点である。
3-4-2-1の正体
3-4-2-1の強さはそれが「3-4-2-1でないこと」である。
攻撃時はWBが高い位置を取り3-2-4-1に変わり、守備時はWBとシャドーが下がり5-4-1にシフトする。日本というチームの戦力的立ち位置から見て本大会中はほとんどの時間を5-4-1で戦うだろう。
それぞれの役割
このシステムには各々役割がある。
まずは1トップ。求められる役割は3つ。
- 点を決める
- ボールを収める
- 個人である程度打開できる
近年のチェルシーで言えば1はジエゴ・コスタ、2はオリビエ・ジルー、3はアルバロ・モラタがそれぞれ抜けている。とはいえ全員が3つ全て並以上にこなせる能力を有していた。

(サッカーダイジェストより)ジエゴ・コスタ。チェルシーではポストプレーやドリブル突破を補ってあまりある類い稀な得点力を見せた
日本代表だとそれぞれ得意なプレーはあれど1は鋭いゴールへの嗅覚を持つ岡崎慎司、2はポストプレーに定評のある大迫勇也、3はウイングとしても使える武藤嘉紀だろう。しかしチェルシーのFWと異なり岡崎にポストプレーが期待できなかったりと全てを一定水準で持つ選手はいないのが現実だ。
CFの孤立はこのシステムの課題の一つである。ちなみに前述の「粉砕されたケース」では絶対エースのロメウ・ルカクが完全に孤立し、枠内シュートすら90分飛ばさせなかった。
恐らくではあるが苦しい時間が続くことが考えられるため、時間とタメを作れるプレーヤーがファーストチョイスではないか。
ただし日本にはCFの一長一短を解決する方法が一つあるような気はするが…
次に2シャドー。求められる役割は2つ。
- カウンターの担い手
- 献身的な守備
CFがキープした時間を使い追い越す、あるいは中盤でドリブルで切り込む役割が求められる。チェルシーではエデン・アザールやウィリアン、ペドロが担う。見ての通りスピードとテクニックはもちろん、得点力も必要だ。
その事実に相反するようではあるが献身的な守備も求められる。ペドロのように時にWBの地点まで戻ることが格下の日本には絶対に必要なシャドーの条件だろう。
日本が格上相手に遅攻するメリットなどないのだがその「自分たちのサッカー」の担い手である本田圭佑をこのポジションで出すのはいささか厳しい。
また怪我明けの香川真司のシャドー適正は不明だがやや得点力に不安がありまた周りとの連携で崩すタイプゆえに攻撃人数が少なくなるこの布陣で最大限の力を発揮できるかは未知数だ
個人で打開でき、シュート力のある宇佐美貴史、テクニックで頭一つ抜ける乾貴士、WBでの起用が濃厚ながら献身性と決定力のある原口元気あたりがやや前に出ていると思われる。
次にWB。実はここがこのフォーメーションのカギを握ることはチェルシーサポーターなら疑いはないだろう。求められる役割は2つ
- 豊富な運動量と対人守備力
- 最後のアクセントとなる攻撃力
チェルシーではビクター・モーゼスとマルコス・アロンソがレギュラーを張る同ポジジョンだが1.2ともに兼ね備えている。両者守備はもちろん、モーゼスは元2列目らしいドリブル、アロンソは高さとパワフルな左足で攻撃にも大きく貢献している。
日本代表では長友佑都が左WBに入るのはまず間違いない。スピード、フィジカル、運動量などあらゆる面で他の追随を許さない。フアン・クアドラードやサディオ・マネと唯一戦える選手だろう。


(サッカーキングより)日本と戦うコロンビアのクアドラード、セネガルのマネ
右WBはマルセイユで守備を磨かれた酒井宏樹か攻撃力のある原口元気の争いを酒井高徳が追いかける形だ。酒井(宏)、原口の両者共にコンディションが良く、特徴も違う。ただ恐らく長友のサイドが攻撃の主体になると考えられるため守備力と空中戦に秀でる酒井宏樹が先発するのではないか。
次にCMFだ。求められる役割は2つ
- 中盤のフィルター
- 攻撃の展開
チェルシーではヌゴロ・カンテを軸にネマニャ・マティッチ、ティエムエ・バカヨコ、セスク・ファブレガスらがコンビを組んで来た。
もっともカンテレベルの選手は日本どころか世界で唯一無二であるため当てはまることなどできないのだが。
個人的には井手口陽介と山口蛍が組んで守備力を上げてくると読んでいた。ところが井手口は落選、山口のパフォーマンスも批判の対象となり、代わって柴崎岳や大島僚太ら攻撃的な中盤の選手が評価を高めた。
しかし本大会で2人の攻撃的MFを置くことはリスクが大きいとの見方も当然だ。そこでスペインで揉まれる柴崎は確定とし、大島と山口の争いだが…。
実はここが一番の日本のウィークポイントではないかと見ている。バランサーの長谷部をCBとしたことで中盤のクオリティが明らかに下がっている。
恐らくファーストチョイスは山口だろう。3バックの弱点であるCB脇のスペースを潰せる運動量やハメス・ロドリゲスを筆頭に相手のエースを潰すことを優先した。また大島のスペ体質も気になるところでW杯で無駄な交代枠は避けたい。
とはいえ山口の展開力や技術を見ると不安というのが正直な感想である。
次にCBである。求められる役割は2つ
- ストッパー
- 攻撃の展開
吉田麻也、長谷部誠、槙野智章は確定だろう。地味にスピードのある吉田と槙野をサイドのCBに置き長谷部をリベロに。不安材料は空中戦である。長谷部とCFがまともに競り合う形は避けたい。好材料を挙げるとするならば全員に3バックの経験があることだろう。
試合展開によっては空中戦に強い鹿島CBコンビ投入もあり得る。
2の攻撃の展開は日本の課題である。日本のCBの中で圧倒的に光る足下を持つものはおらず、ハイプレスにかかった場合逃げ切れるかは問題だ。特に3CBは4バックと違い数の問題から預け手が少なくなりがちである。いくら人数がいようとゴール前で奪われた場合はもちろん、長身FWもおらず、苦し紛れのロングボールを延々と回収されればいつかは必ず決壊する。
とはいえこの人選が覆ることはないだろう。
最後にGK。役割もなにもとにかく止めるのが仕事だ。
もともと川島や東口、中村に特筆すべき足下はないため、攻撃への期待値も少ない。代わりにシュートストップに全てをかけてほしい。
高い確率でファーストチョイスは川島だろう。ただガーナ戦でのミスや、2010年大会のように直前での守護神変更が吉と出たケースもあり、100%確定ではない。
日本に最適な布陣
実は個人的に日本にはこの3-4-2-1が非常にマッチしているのではないかと感じている。
まずはWBというこの布陣のカギについてだ。日本代表選手の中で今一番充実しているのはガラタサライでレギュラーとして優勝した長友、リーグアンの名門マルセイユでEL決勝や激しいCL権争いを経験した酒井宏樹だろう。この2人を軸に据えるならばピッタリだ。
また守備陣はドイツで充実のシーズンを送ったキャプテン長谷部、プレミアで苦しみながら残留を果たした吉田、ハリルチルドレンとして大きな飛躍を見せた槙野、GKはフランスで降格チームの中奮闘した川島と大崩れは考えづらい中堅、ベテランが揃った。
ロースコアゲームでしか勝利のビジョンが見えない日本には心強い部分である。
さらにしばしば揶揄の対象にもなる日本人特有の献身性や勤勉性も、運動量や走力の求められるこの布陣には最適だ。原口を筆頭に乾や宇佐美もそれなりの強度の守備が期待できるのは加点対象である。
攻撃の人数が減るのは得点力に難を抱える日本にとって一見苦しく見えるが、シンプルにシュートを打つ意識が高まったり、バイタルでの渋滞がなくなることに繋がると考えればマイナスなことばかりではない。
理想のメンバー
これが思い描く理想のメンバーである。中盤以下は前項と被るため割愛するが前線の採用理由を説明する。

理想のスタメン。シャドーは宇佐美と原口
まずは2シャドー、宇佐美貴史と原口元気である。宇佐美にはより攻撃的な、原口にはより守備的なタスクを求める。シュート力やシュート意識の高い宇佐美と運動量のある原口のコンビは所属チームが同じという連携面でのメリットもある。
後半に入り双方疲れが見えてきたところでテクニックのある香川やドリブラー乾を投入しても面白い。2人を先発から外したのはコンディションを考慮した部分とミドルシュートにやや難があると見るからだ。遅攻でエリア内の決定機が何度も訪れる想像は残念ながらつかない。
そして1トップは本田圭佑。南アフリカ時代への回帰ではない。残念ながら当時のようなしなやかなドリブルは今は期待できないためだ。しかし体の強さを持ち、W杯のような大きな大会に強いのが彼である。また最前線に置くことで彼が持ちすぎることによる中盤での遅攻が防げる。
本田は走る側としてはスピード不足が指摘されるが、ポスト側としては十分速攻に対応できるというのが予想である。実際ロシアW杯最終予選、アウェーでのオーストラリア戦では1トップとして巧みな落としを見せ、速攻から原口の得点へ繋げている。
W杯出場国のDF相手に1人で打開する個人技はないが、メキシコで見せる決定力の高さはもちろん期待したい。
ロシアへ
今までの経緯から見て素直に日本代表を応援出来ないのは正直よくわかる。個人的には結託して「ハリル下ろし」に加担した可能性があると言われる本田圭佑と香川真司を使うのは、もし事実だった場合にはありえないと考える。
今大会はそれこそベスト4くらいまで行かないと成功ではないだろう。運だけでベスト16まで行っても得られるものは何もない。
特に日本は弱小国であり、後進国だ。4年間を無駄にすることは本来あってはならないし、現実的に言えば優勝はおろかGS突破の確率も低く、「勝利する」ことでなく、「勝利を追求する」ことで成長の場にしなければならなかった。
もっともそれがわかっているものがメディアを筆頭に何人いるのかではあるが。
とはいえ終わったことを嘆いてもしょうがないのもまた事実である。もうハリルはいないし、メンバーも不測の事態がない限りこの23人で戦うことが決まった。それでいかに勝つかを考えるのは構わないだろう。
勝利の可能性が低い(あるいはハリル解任でさらに低くなった)うえ、忖度ジャパンと言われ応援する気持ちが損なわれようと、政治性を度外視してフォーメーションを考えるくらいの楽しみはサッカーファンにあってしかるべきだろう。
〜おしまい〜
コメント