レンタル移籍は過去のもの。「買戻し」は三方よし

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「売却」を始めたチェルシー

レンタル移籍は過去のものとなりつつある。

これまでプレミアリーグ随一のレンタル選手を抱えていたチェルシーが、続々と若手を「売却」しているのだ。

既にクリスタルパレスにDFマーク・グエヒが、サウサンプトンにDFティノ・リブラメントがそれぞれ完全移籍で活躍の場を移した。

また新戦力、FWロメウ・ルカクを含む玉突き移籍として、FW タミー・エイブラハムはローマに出場機会を求めた。

(ローマ公式より)好スタートを切ったエイブラハム

また執筆段階ではMF ティーノ・アンジョリンも、完全移籍でのロシア行きが進行中とのことだ。

 

若手をここまで早い段階でチェルシーが売却するのは、極めて珍しい。

まだグエヒやリブラメントには、トップチームでの出番はなかった。

これまでならチャンピオンシップ(2部)や他国の少し実力落ちるリーグに貸し出していだろう。

それがチェルシーのテンプレートだったからだ。

しかしここ最近はあっさりと完全移籍で譲渡する例が目立つ。

これはどういった変化なのだろうか。

実は「三方よし」の移籍劇

行商人の世界で昔からある単語が 「三方よし」だ。

この場合の三方とは、売り手、買い手、社会の3名を指す。

全員が得をするwin-win-win。

それを三方よしと言う。

このチェルシーのふるまいも実は三方よしなのである。

売り手・チェルシー

チェルシーとしてはまずは移籍金の確保ができる点が大きい。

これまではレンタル移籍だったため、あくまでレンタル費用のみだった。

しかし完全移籍となれば、当然受け取れる額も大きくなる。

もちろん実績のない若手なので、超高額は期待できない。

ただここ最近の市場の潮流としては「実績<年齢」であるのもまた事実。

若干コロナ禍で陰りも見えているが、大まかな流れとしては今後も続くだろう。

なお同じプレミアリーグでは、リバプールが若手の売却が上手い。

FW ライアン・ブリュースターはプレミアリーグでは1点も挙げていなかったが、32億という金額を残してシェフィールド・Uに移籍をしている

若手をプレミアリーグの他クラブに売却し、移籍金を得る手法では先駆者だ。

 

チェルシー側の利点はまだある。

契約に買戻し条項を付けられる点だ。

特約として、チェルシーには特別な額で買戻しができるオプションをつける。

これにより、チェルシーとしてはレンタルバックより多少費用がかかるとはいえ、有望株をみすみす取り逃す可能性は減る。

特に最近はMFマリオ・パシャリッチ(アタランタ)やMFジャマル・ムシアラ(バイエルン)の例もある。

CLクラスのチームで活躍する元チェルシーの若手も増えてきたのだ。

爆発的な成長を遂げた選手は、当然スカッドに加えたい。

その際、市場評価額以下で買戻せる契約は極めて魅力的だ。

買い手・他チーム

買う側も当然完全移籍の方がありがたい。

長期間の戦力として期待できるし、仮に評価が高まれば、メガクラブから声がかかるかもしれない。

そうなれば莫大な移籍金を手にすることもできる。

レンタル移籍ではその一年はともかく、今後の継続性はない。

とにかく残留して今季を乗り切ろうというクラブならばレンタルでもいいと考えるだろう。

しかし長期的プランをもとに上位進出を狙いたいチーム、プレミア常連でありながら中堅に留まるクラブには完全移籍の方が得策だ。

クリスタルパレスやサウサンプトンは、まさにそうした立ち位置のチームと言えるだろう。

 

また費用が抑えられる点も魅力的だ。

期待の有望株とは言え、大物選手よりかは安価で獲得できる。

給与もベテラン選手より安いため、仮に不良債権となってもクラブを圧迫する可能性は低い

 

デメリットとしてはどれほどのタレントであっても、あくまで未知数という点か。

とはいえチェルシーのようなビッグクラブの下部組織ならば多少の保証にはなる。

また「先輩方」の活躍も大きいのではないかと予想される。

トップチームで活躍するMF メイソン・マウントをはじめ、「チェルシーユースはトップリーグでもやれる」認識が広まってきている。

先述のパシャリッチやムシアラはもちろん、DF タリック・ランプティ、DF フィカヨ・トモリらの活躍もセンセーショナルだった。

諸先輩方の奮闘が、獲得への背中を押しているのではないか。

中堅クラブから見れば、投資として悪くないリスクとリターンのバランスだろう。

社会・選手自身

最後は選手自身のメリットだ。

これまでレンタル組はトップチームでも出番を見つけられず、さらには安住の地も見つけられずたらいまわしにされるケースも多かった。

7度目の“レンタル地獄”にもう疲れた? チェルシーMFのホームはどこなのか

毎年のように環境が変わる、それも国が変わるというのは安定したパフォーマンスの発揮には難しい状況だ。

選手としても完全移籍でチームが見つかるのは良いことだ。

チェルシーよりは比較的チームのレベルも下がるため、重要な「継続的な出場機会」も得やすくなる。

ただあまりにもチームレベルが下がってしまうと成長機会も減ってしまう。

その点でプレミアリーグ中堅クラブは、哲学を持った指揮官も多い。

もちろんミラン、アタランタ、ローマのようなクラブならCLも夢ではない。

「自分はロングボール以上の戦術に適応できる」ことを証明していれば、他クラブも手を挙げやすい。

永住するも良し、チェルシーとは別のステップアップを目指すも良し。

自身のキャリアを、自身の力で見つけやすくなるだろう。

レンタル移籍は過去のものへ

「人身売買」などとも揶揄されたチェルシーのレンタル制度だが、ここに来て変わっているのは間違いない。

レンタル移籍は過去のものへとなりつつある、

とはいえこれまでが無駄だったかというと決してそんなことはないだろう。

レンタル制度の確立により育った若手たちがトップチーム、あるいはトップリーグでもやれることを証明し出したという事実がある。

今回の転換はそれ故のネクストステップと捉えるのが正しいのではないか。

 

レンタルから買い戻しという変革。

この変革の胎動が、150億でのルカク再獲得と同じ年というのは、いさささ運命的なものを感じないだろうか。

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